離婚が不登校に与える影響と対策

不登校のなぜ

はじめに

不登校と離婚で検索される方は2パターンおられます。

不登校の子どもを持ち、過去に離婚している方
不登校の子どもを持ち、現在離婚を考えている方

不登校の問題は子どもだけでなく、家庭全体に大きな影響を与えます。離婚が原因で子どもが不登校になることもあれば、逆に子どもの不登校が原因で夫婦関係に亀裂が生じ、離婚を考える家庭もあります。当センターではどちらのケースのご相談も多くあります。本記事では、不登校と離婚の相互関係について深掘りし、家庭内の問題を解決するための具体的な対策を提案します。

不登校の子どもを持ち、過去に離婚している方

親の離婚の子どもへの心理的影響

離婚が子どもにとって大きな心理的ストレスとなるのは事実でしょう。

Amato (2000)は以下のように、子どもへのネガティブな影響を挙げています。

学業成績の低下
離婚家庭の子どもは、成績が低くなる傾向があります。

行動の問題
離婚家庭の子どもは、行動上の問題を抱えることが多く、特に外向的な問題(反抗的な行動や攻撃性)が顕著です。

心理的調整の困難
離婚家庭の子どもは、内向的な問題(不安や抑うつ症状)を抱えることが多いです。

自尊心の低下
離婚家庭の子どもは、自尊心が低くなる傾向があります。

社会的能力の低下
離婚家庭の子どもは、友人関係や社会的スキルに問題を抱えることがあります。

実際の支援の現場

実際にご相談でも「離婚が不登校の原因かもしれない」と来られるケースもあります。

しかし、私でも一概にはその子どもの不登校の原因が「親の離婚」だとは断定できません。もちろん影響がなかったとも言い切れませんが、離婚だけが不登校の原因だという決めつけは致しません。離婚が不登校の「一要因」ではあるかもしれないが、他の要因に対してもケアをしてアプローチしていきましょうとお伝えしています。

離婚の影響でポイントとしては、
離婚してどれくらい時間が経っているのか
離婚によって環境は変わったのか
どの程度の頻度で離婚した父(母)にあっているのか
などが挙げられます。

また、養育者である母(父)に対して子どもが怒りを感じているように見られる場合は、上記に加えてどのような経緯で離婚されたのか、も重要なポイントになります。

片親を責める子どもの言葉で「全部お前のせいだ」というのもよく聞きます。

「なんだかみんなより私は損をしている」「うまくいかないのはお前のせいだ」といった抽象的なニュアンスが含まれていて、似通った反応の子どもでも「その根っこ」により必要な対応が異なるために、「根っこ」がどこにあるのかを分析して、適した対応を取る必要があります。

不登校の子どもを持ち、現在離婚を考えている方

夫婦間の対立

子どもの不登校に対する対応方法について意見が対立し、夫婦間の対話が不足することが多いです。夫婦の一方が厳しい対応を求め、他方が子供に対してより優しい対応を望む場合、これが対立の原因となります。例えば、片方の親が「甘やかしている」と感じ、もう一方が「理解が足りない」と感じることで、夫婦間のコミュニケーションが不足し、深刻な亀裂が生じます。夫婦間の対立は、不登校の子供にさらに悪影響を及ぼすことがあります。

実際の支援の現場

「夫(妻)が子育て非協力的だ」
「夫(妻)が不登校の子どもにとって悪影響を与えている」
「夫(妻)が子どもの不登校で変わってしまった」
「子どもの不登校という問題から、様々な夫婦の問題が明るみに出て環境一新して子どもと向き合いたい、いやむしろそうしたほうが子どもにとって良いのではないか」

「現在不登校の子どものことで離婚を考えており、支援を受けることを考えている」という方のご相談も多く受けています。

しかし、このような離婚も視野に入れた状態でご相談に来られた方も、支援前支援中に離婚されるケースは現在までゼロです。

支援を通じて夫婦の形が変化を感じられることが多くあります。不登校を乗り越えるために、夫婦で協力してもらうことが必須です。そのため、夫婦としてまた父や母として今まで気づかなかった新しい面に気づくこともあるようです。

私は「離婚した場合の子どもの不登校改善プラン」と「離婚しなかった場合の子どもの不登校改善プラン」を同時に考えてカウンセリングを行います。「離婚 不登校」一括りにした対応ではなく、その家庭ごとにベストな対応を探っていきます

解決策とサポート

「不登校支援」と「家族,夫婦カウンセリング」の二つの専門知識と技術が必要になりますので、資格をもつ臨床心理士、公認心理師の先生に相談することが安心できるでしょう。

「夫婦間でのオープンな対話を促進し、共通の理解を持つことが重要」
「第三者の視点からのアドバイスが得られる」
ということなどが資格を持つ心理職のカウンセリングで得られる効果でしょう。

私はこれらに加えて不登校についての悩みを専門家に「任せる」ことも大切だと思っています。

「子どもの不登校」が始まってからずっと親は考え悩み判断をし、また後悔をし続けて、カウンセリングルームの扉を勇気をもって叩きに来られます。勇気をもってカウンセリングルームに来ていただいたことで、親として最初にやるべきことはやっているとお伝えするようにしています

支援が始まってからは、不登校の対応については私が一旦すべて「考える役割」を引き受けさせていただくことになります。

支援を受け始めの方は「あー先生こんなことになってしまいました」という連絡をくださることが多くあります。

そんなときも「それは大変な状況ですね。でも、うわーどうしよう,と考えるのは,これから私の仕事なので、もう皆さんは悩むことはしていただかなくてかもいません」そんな風に笑って返しています。

「こういうふうになったら,,,」次どうなるのか、そういうことが起こるということは今どいう状況なのかなど、起きた事象に対してたくさんの計算が必要ですので、当センターでの支援では私に「任せてもらう」ようにお願いしています。

母(父)子家庭での不登校と、不登校の子どもを持ち離婚を考えている親の支援の利用

どちらの場合の不登校のご相談も、現状維持のまま悩みを抱えている状態でご相談に来てください。だれかを説得したり,説き伏せるようなことはしたりしません。まず私の話をきいてから先のことを考えてください。分からないことを何日何週間ひとりで考えても新しいファクターは出てきません。私が今後起きるだろう状況をすべて列挙して土俵に上げて一緒に考えてみましょう。

まとめ

復学支援のプランも母子のみで設計図を作る時もあれば、離婚はされているが父親(母親)に協力してもらうケース、祖父母に代替してもらうことなどご家庭の状況に合わせてあらゆる手段を考えていきます。

復学支援においては、「有るもので戦うの」精神で、不足を嘆くより、今からできることは何かにフォーカスして笑える子育てを目指しています。

不登校と離婚の問題は、家庭内の大きな課題となることが多いです。しかし、適切なサポートと対策を講じることで、家庭内の緊張を和らげ、より良い関係を築くことが可能です。当センターでは「子どもの不登校改善」を第一義として心理職のチームがフルサポートで行う支援で笑ってできる子育てを実現させます。

参考文献

  1. Amato, P. R. (2000). The consequences of divorce for adults and children. Journal of Marriage and Family, 62(4), 1269-1287.
  2. Bronfenbrenner, U. (1979). The Ecology of Human Development: Experiments by Nature and Design. Harvard University Press.
  3. 文部科学省, 「令和3年度不登校児童生徒数の動向」, 2022年.
  4. 厚生労働省, 「家庭内不和と児童の心理的健康」, 2021年.
  5. 日本教育学会, 「家庭環境が子どもの学業に与える影響」, 2020年.
  6. 子ども家庭総合研究所, 「離婚後の親の役割と子どもの心理」, 2019年.
  7. 文部科学省, 「不登校児童生徒への支援ガイドライン」, 2021年.
  8. 厚生労働省, 「児童相談所の役割と支援」, 2022年.

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